米911テロ最終報告書

 【ワシントン=永田和男】2001年9月11日の米同時テロに関する独立調査委員会(9・11委員会)は22日、約1年8か月にわたる活動を締めくくる最終報告書を発表した。
 567ページの報告書は、情報機関が国際テロ組織アル・カーイダによる攻撃計画を防ぐ機会を10回も逸してきたと批判。中央情報局(CIA)や連邦捜査局FBI)を統括する閣僚級ポストの新設など、情報機関の抜本的改革を勧告した。
 トーマス・キーン委員長(元ニュージャージー州知事)は記者会見で「政府はテロとの戦いに対処できたとは言えない」と語り、情報機関の失態を糾弾した。
 報告書は<1>後に同時テロ実行犯となる2人がバンコクに立ち寄った際、監視を怠り、2人が米国に入国してからも適切な処置を取らなかった<2>実行犯の一味で同時テロの前月に拘束されたザカリアス・ムサウイ容疑者の尋問が不適切だった――など、米史上最悪のテロを阻む好機をいかせなかった10の事例を列挙した。
 また、テロ犯が情報機関の「組織上の欠陥」につけ込んだこと、テロの兆候を現実の脅威と結びつけて考える「想像力の欠如」が「最大の問題」だったことなどを指摘した。そのうえで閣僚級ポストの新設やテロ対策センターの創設を提言した。
 ただ、報告書はブッシュ大統領クリントン前大統領らの責任は追及せず、両政権ともテロの脅威を深刻に受け止めていたことは認めた。
 ブッシュ大統領は22日、報告書について、「建設的な要素が盛り込まれている」と述べた。しかし、閣僚級ポスト新設などについては、「政府として行うべきことは行う」と述べただけで、明確な態度は示さなかった。
 9・11委員会は死者約3000人を出した同時テロを検証、総括するため、2002年11月に発足した超党派の機関。ブッシュ大統領クリントン前大統領を含む10か国1000人以上の関係者から事情を聞いてきた。
 最終報告を機に情報機関の改革を求める機運が一層高まることが予想される。
 ◆9・11委員会=正式名称は「米国へのテロ攻撃に関する国家委員会」。同時テロを阻止できなかった原因を調べ、再発を防ぐため、政府と議会から独立した委員会として発足。共和、民主両党が指名した計10人で構成、委員長はトーマス・キーン元ニュージャージー州知事(共和党)。分析した書類は計200万ページに及ぶ。
 ◆9・11委員会最終報告書の骨子◆
 ▽テロ実行犯は情報機関の組織上の欠陥につけ込んだ
 ▽米政府は同時テロを防ぐ10の機会を逃した
 ▽最大の問題は想像力の欠如だった
 ▽情報機関を統括する閣僚級ポストの新設を勧告
 ▽テロ対策センターの新設を勧告
(2004/7/23/01:41 読売新聞 無断転載禁止)

(CNN) 2001年9月の米同時多発テロで、乗客がハイジャック犯と格闘し、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外に墜落したとされていたユナイテッド航空93便で、実際は乗客は最後まで操縦室に入れず、乗っ取り犯が自分たちの判断で地面に激突させていたことが、独立調査委員会が22日発表した最終報告書で分かった。
ただ、乗客らの決死の抵抗で、同機がホワイトハウスまたは米連邦議会ビルへなどへ突っ込むのが阻止されたとの見方は変わっていない。
93便の墜落をめぐってはこれまで、携帯電話を通じ家族からニューヨークでのテロ発生を知らされた乗客らが操縦室に突入。ハイジャック犯と格闘し、人口密集地への墜落を阻止したとの見方が主流だった。
しかし、操縦室のボイスレコーダー(音声記録装置)などを分析した報告書によると、操縦していたハイジャック犯がコックピット制圧を図る乗客を退けるため、機体を上下に揺らすなどして抵抗した事実が判明。
ドア越しの衝突音や、「中に入らなければ、我々は死ぬ」との乗客の叫びも記録されていたという。
ハイジャック犯の1人が、仲間に対し「墜落させるか?」と提案していたやりとりもあり、「まだだ。乗客が入ってくる時にしよう」と答えていた。その数秒後、「アラーは偉大なり」と口走った後、仲間に「落とすか?」と再度尋ね、答えは「落とそう」だった。
「落とせ!落とせ!」との乗っ取り犯の叫びも含まれていた。
報告書は、犯人は最後まで操縦室に閉じこもっていたが、乗客らは数秒間後に突入可能で、その後、制圧されるとの不安が墜落の決行につながったと指摘している。